新川耕地
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にほどりの葛飾早稲を饗(にへ)すとも
その愛(かな)しきを外(と)に立てめやも
万葉集 東歌
↑斜面林下から江戸川方面をのぞむ
台地が切れたところから江戸川堤防まで低地が広
がっています。ここには広大な水田が広がっています。
奈良時代からこの氾濫原が耕作地であったのかどう
かはわかりませんが、縄文時代の遺跡なども周辺に
は見つかっていますから、早くから人が住み着いて
いた場所であることは確かだと思います。
冒頭の和歌がつくられた万葉集の頃、この地域は
どんな様子だったのでしょうか。
(冒頭の和歌の解釈)
葛飾の早稲を神にささげる時だから(恋をしていては
いけないのだけれども)、私の愛しい人を家の外で待
たせておくことができましょうか。
(出典はありません。当塾で勝手に解釈。)
新川耕地の水田地帯は動植物の宝庫で、タゲリや
ケリという鳥などが渡ってきます。
また、オオタカの森で有名なオオタカは、この辺りも
餌場としていると考えられています。つまり、生態系の
頂点に立つオオタカの生息のためには、新川耕地の
ような広い水田地帯が必要なのです。「オオタカの森」
だけを残しておいても、オオタカの保護ができないと
いうことで、オオタかの保護のためには、新川耕地など
の保護も必要になります。
台地が切れたところは斜面になっていますが、
そこには斜面林がえんえんと続いていて、動植物の
宝庫になっています。斜面にそって湧水があるので、
斜面のすぐ下には水路があります。今から30年くらい前
は、コンクリート護岸ができておらず、自然の菖蒲が咲き、
ザリガニがいる湿地が形成されていました。現在は、コン
クリートの護岸で、ドブのようになってしまっています。
斜面林は、緑の回廊を形成しており、利根運河と連結し
て、江戸川、利根川、下三ヶ尾や大青田の湿地帯とつな
がります。多様な自然の保護という観点から、緑の回廊
という考え方は重要だと思います。
利根運河を渡った野田側にも斜面林はありましたが、
低地のほうに、近年、大規模住宅地が開かれて、さらには
大物流センターの計画が出されるなど、開発の波が押し
寄せています。
江戸川の上にはサイクリング道路が通っています。
真夏にここをランニングして、大汗をかきながら一休みし
たことがあります。新川耕地の青々とした稲の上を風が
通り抜ける様子が見えて、最高の景色が広がっていました。
★お薦めサイト★
たのしい万葉集
イラストや写真も載っていて、とても分かり易いし、
このサイトを見ていて、万葉集が更に好きになり
ました。記事も膨大で、とても勉強になりますし、
タイトル通り、たのしいサイトです。
★ お薦めの本の紹介 ★
『オオタカの森ー都市林「市野谷の森公園」創生への道 』
新保国弘 著
「おおたかの森」の駅ができましたが、その開発の途中での
オオタカの営巣地を保全するための運動の過程が書かれて
います。
オオタカの保護のためには営巣地だけではなくて、その餌場
となる水田や斜面林、湿地の保全も必要となるという話を興味
深く読みました。本書で紹介されている保護運動の方の「水と
緑の回廊」案は興味深いものです。
反対や批判ではなく、提案をしていくことが重要だというお話
にも、学ぶものがありました。
『水の道・サシバの道ー利根運河を考える』
新保国弘 著
オオタカが脚光を浴びていますが、サシバという貴重な
鳥も生息しているそうです。開発計画が進む中で、里山
の保全が言われるようになりました。
本書をお読みになると、また、違った目で地域の自然を
見ることができるようになる思います。
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柏や流山の本屋さんでも、崙(ろん)書房さんの
本がよく売られています。地元密着の素晴らしい
本がたくさんあります。ちなみに、「松戸 水戸街道」
で紹介した『江戸川ライン歴史散歩』も崙書房さん
から発行されています。