新川耕地と斜面林


   台地が切れるところの斜面には、斜面林が形成されています。
  クヌギのような落葉樹もありますし、カシやシイなどの常緑樹も
  あります。タヌキなどの小動物も住んでいる自然の宝庫です。

   台地が侵食されてできた、いわゆる「谷津(やつ)」という谷に
  は湿地ができます。

   こうした台地と谷津と斜面林が、東葛飾地域にはあちらこちら
  にあって、いわゆる「里山」の景観を作り出しています。

   新川耕地のある江戸川氾濫原の平地に接する所の斜面林は、
  利根運河からえんえんと続いています。断続的に松戸まで続い
  ています。

   写真の左端、ちょうど斜面林のすぐ下には水路があります。
  以前はコンクリートで護岸工事されていなかったので、菖蒲が
  きれいに咲き、ザリガニなどもいました。台地を通ってきた水が
  ここにたまるのです。

   こうした水辺が、斜面林の自然に多様性をもたらしてくれてい
  るようです。

    

    生物の多様性ということを考える時、その「意義」と
   は別に、多様な生物の営みを知る面白さも感じます。
    
    本川達雄 『ゾウの時間 ネズミの時間 サイズの生物学
   はずいぶん前に話題になった本です。お読みになった
   方も多いのではないでしょうか。入試問題などでよく取り
   上げられていたので読んでみたのですが、とても面白い
   本なのです。

    書かれている内容を少し紹介します。

    本書によれば、哺乳類ではどの動物でも、一生の間に
   二〇億回、心臓が打ち、約五億回、呼吸するそうです。
   これらは、体のサイズによらず、ほぼ同じ値。心臓の拍動
   を時計として考えると、ゾウもネズミもまったく同じ長さだけ
   生きて死ぬことになるというのです。

    他にも、昆虫の気管というものの話題に、私は強く惹き
   付けられました。本書によれば、飛ぶために大量にエネ
   ルギーを使う昆虫は、身体に酸素を直接送り込む気管と
   いうものを使うそうです。しかし、外骨格であるため、脱皮
   をせねばならず、しかも、気管という複雑に入り組んだもの
   まで脱皮するわけで、その脱皮が昆虫に最大の危機をも
   たらすというのです。
   
    本書を読んで、昆虫を違った目で見ることができるよう
   になりました。

    時間のある時に、一読する価値のある本だと思います。