矢切の渡し
江戸川の渡し舟があるところです。
伊藤左千夫 『野菊の墓』
「 茄子畑というのは、椎森の下から一重の藪を通り抜けて
家より西北に当る裏の前栽畑。崖の上になってるので、
利根川は勿論中川までもかすかに見え、武蔵一えんが
見渡される。秩父から足柄箱根の山々、富士の高峯も
見える。東京の上野の森だと云うのもそれらしく見える。
水のように澄みきった秋の空、日は一間半許りの辺に
傾いて、僕等二人が立って居る茄子畑を正面に照り返し
て居る。あたりは一体にシンとして又如何にもハッキリと
した景色、吾等二人は真に画中の人である。
『マァ何という好い景色でしょう』
民子も暫く手をやめて立った。 」
悲恋という言葉を用いるのが、ためらわれます。
題名はよく知られていますが、読んだことのない方も
いらっしゃるのではないでしょうか。